こんにちは。boo booです。
とある病院でメンズナースをしています。
私が看護学校に入った当時から、
「看護師は将来不足する」
「30代からでも資格さえ取れば仕事ができる」
と言われていました。
しかし実際、看護師として働いてみると「看護師の将来性」について疑問に思うことも出てきました。
どこででも働けるとしても、看護師という労働そのものがブラックな環境ばかりだったり賃金があがらないとしたら、将来性があると言えるでしょうか。
少子高齢化によって認知症高齢者の患者が増えてきたことや、コロナ禍での労働環境の変化を目の当たりにしている今、改めて看護師の将来性を考えてみたいと思います。
そこから、個人がどうやって看護師として働いていくかも併せてみていきたいと思います。
職場や看護学校では「看護師として専門性を高めましょう」と言われ続けてきました。
もちろんそれも大切ですが、もう少し違った視点で考えてみたいと思います。
看護師として働いている人、これから看護師を目指す人にとって参考になれば幸いです。
看護師は将来不足する?
「看護師は将来不足する」と良く言われています。
本当なのかちょっと調べてみました。
すると厚生労働省のホームページに以下のような記載がありました。
税・社会保障一体改革における推計において、団塊の世代が後期高齢者となる平成37年には、看護職員は196万人~206万人必要であるとされています。就業者数は、年間平均3万人程度、増加していますが、このペースで今後増加しても平成37年には3万人~13万人が不足すると考えられます。 今後、必要となる看護職員を着実に確保するために、「養成促進」「復職支援」「離職防止・定着促進」に取り組んでいます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000095525.html
なので、「看護師が将来不足する」と予想されていることは間違いないです。
少子高齢化 2025年問題
2025年前後に「団塊の世代」と言われる第一次ベビーブームに産まれた世代が全員75歳を超えることでさらなる超高齢化社会に突入していきます。それを2025年問題と言います。
少子高齢化が叫ばれていますが、2025年という年を境にさらに進んでいくというわけです。
看護師の労働環境は今でも人手不足で過酷です。
今後、さらに悪化する可能性があるということですね。
看護師は男性より女性の割合が多く、結婚や出産を機会に退職する人も多いです。
やはり職場環境や待遇が満足のできるものであれば、離職する人はもっと少なくなるのではないでしょうか。
このような看護師不足への対策として、国は「看護師等の人材確保の促進に関する法律」や「働き方改革」で看護師の人員確保をすすめたり労働環境の改善に動いています。
看護師の離職率は高い?
2020年の正規雇用の看護師の離職率は10.6%です。日本看護協会によると、ここ10年程度では2019年に少し上昇している以外はほぼ横ばいと言っていいと思います。(2019年の上昇は新型コロナウイルスの影響の可能性)
同じく、厚生労働省の資料によると2020年の日本企業全体の離職率の平均は14.2%でした。
以外にも、看護師の離職率は日本企業全体と比較してむしろ低いということです。
看護師は、離職率が高いイメージがありましたが意外な結果ですよね。
潜在看護師とは
看護師の離職率は、その他の仕事と比べて決して高くはない、ということがわかりました。
しかし、ここで注意が必要なのは普通、離職した人は違う会社に就職しますよね。
しかし厚生労働省の調査によると看護師の離職の理由は「結婚・出産・育児」がトップとなっています。
ということは、離職後は看護師として再就職をしないパターンが多いのではないかと予想できます。
日本は看護師不足であり、将来もこの傾向は続くことが予想されることは述べたとおりです。
現在日本には約70万人程度の潜在看護師がいるとされています。
国は、離職した看護師にもっと再就職してほしいわけです。
しかし、看護師は新人に対しては研修や教育制度はありますが、ブランクのある中途入職者に対する支援はあまりないことが現状です。
さらに、病院や病棟ごとの独自のルールや文化が強いということもあります。
看護師の世界は、病棟での人間関係が仕事のやりやすさにも直結します。
人間関係や病棟文化に馴染むことのストレスや不安はそれはもう大変なものです(◞‸◟)
そのためますます再就職のハードルが高くなります。
国や日本看護協会は看護師不足を補うために潜在看護師の復職を支援していくつもりらしいですが、これらの問題をクリアすることはまだまだ時間がかかると思います。
看護師の経済性、生産性の問題
「看護師が将来不足する」と聞いて
「じゃあ需要があるってことでしょ」
「働き口に困ることはないんでしょ」
と思いますよね。
確かにその通りだと私も思います。
しかしここに日本の医療の特殊性があります。
需要があるから良い待遇で働けるとは限らないと思います。
例えば、IT関係で将来性のある資格や仕事があるとしましょう。
IT関係であれば、その資格やスキルをもつ人は色々な企業から求められ、その分良い待遇で働くことできるでしょう。
しかし、看護師の場合は主に診療報酬から報酬が支払われます。
医療は国民皆保険制度によって国民がまんべんなく高いサービスを受けることができます。
そのために、高いスキルを持つ看護師には給料たくさんあげるよ!とはならないんですよね。
一部、美容外科など保険外診療で高い収益を上げられるクリニックや病院なら、高い報酬を得られる場合もありますが、基本的には医療は国民誰もが平等に受けられるべきサービスとなっています。
これは、日本の医療制度の素晴らしい一面ではあります。
しかし働く側からすればどんなにがんばっても「やってもらって当たり前」のサービスだと捉えられてしまいかねません。
需要があるのにそれに見合った報酬が得られない歪みがあると思います。
古い体質の看護師の労働環境
私はいわゆる会社員を経験したことはありません。
病院でしか働いた経験がないため比較はできないのですが、やはり病院の労働環境、システムは古い体質で非効率な場面が多々あると思います。
一例として、忙しく人員が足りずにミスが頻出しているのに、出てくる対策が
「ダブルチェックからトリプルチェックにしなさい!」
というものだったりします。
人を増やしたり業務を減らして効率化しよう、という風にはならないんですね。
エラーを個人の問題で済ませてしまい、根本的な労働環境を改善するという文化が希薄であることが多いように思います。
これは、看護師の専門性に起因していると考えます。
看護師は「傷病者若しくは、じよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行う」と法律で定められているように、看護師は管理や組織の効率化についての教育を受けることが極端に少ないです。
医療安全の授業もありましたが、全体に対してごくわずかです。
もちろん管理職はこれらの勉強をしているのでしょうが、なかなか現場にまで浸透していないのではないでしょうか。
看護師は、患者さんの気持ち寄り添うだとか、ニーズに応えると言った、実態が見えにくいものを考え学びながら行動していく教育を受けてきます。
悪く言うと、経験論や感情論が前に出てきて、気の強い先輩にはなかなか物申せなかったり、新人や学生が理不尽な叱責を受けるといったことが起こりやすい環境です。
このような教育を受けてきた看護師が集まって病棟、病院という組織を運営していくのでなかなか効率化を求めたり論理的な判断ができてないという問題が根底にあるのではないでしょうか。
労働環境はどう変わる?
ジョブ型雇用
日本はこれから終身雇用、年功序列と言った従来型の雇用が変わっていくと言われています。
いわゆるジョブ型雇用です。
ジョブ型雇用とは、職務内容を明確に定義して仕事内容に応じて報酬を得る雇用形態です。
報酬面では年功序列のように自動的に給料は上がらない代わりに、仕事内容に応じて報酬が上下するシステムです。
企業は従業員を解雇しやすくなり、その代わり専門性のある人は転職によって好きな環境や高い報酬で働くことができるようになるという、実力主義の世界に変わっていくということです。
看護師もこのような雇用形態に変わっていくのでしょうか。
看護師は専門性の高い職業です。
にもかかわらず、報酬面では看護師の報酬の財源である病院の収益の大部分が診療報酬である以上、単純にスキルの高い看護師の給料が上がることは難しいと思います。
また、前述したように、職場ごとの独自の病棟文化が色濃いことや、古い体質がどうしても転職の壁があり人材の流動性が低くなってしまいます。
いずれにせよ、ジョブ型雇用が看護師にまで浸透するにはまだまだ時間がかかりそうです。
看護師の働き方改革
日本看護協会によると、看護師における働き方改革について以下のように記載されています。
日本看護協会では、国の「働き方改革」を受けて、看護における働き方改革の目標を「働き続けられる仕組みを創る。その仕組みは実現可能で、持続可能な仕組みであること、看護職が生涯にわたって、安心して働き続けられる環境づくりを構築し推進する」としました。そして、全ての看護職個人が生涯にわたり健康で安全に働き続けられる働き方と、個人の多様な属性等に応じ、組織が看護職個人の働き続けられる働き方を実現するための方策について検討を重ねてきました。
https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/hatarakikata/index.html#points
ようは、看護師として長く働き続けられるように色々やってくよ!ということらしいです。
有休消化率についての義務付けや、時間外労働の上限の規制ができるなどするようです。
これからの少子高齢化に向けて、ぜひ頑張ってほしいと思います。
国も看護協会も、これから看護師が不足することは間違いないので、継続して働いてほしいという意向があります。
そう考えると、少子高齢化するからと言って、極端に労働環境が悪くなるということはないんじゃないかという考え方もできますね。
非正規雇用という選択
これまで、看護師の労働環境や将来性について見てきました。
少子高齢化の影響は間違いなくありますが、看護師の数を確保するために国も日本看護協会も色々と対策をしています。
これがどのような結果になるかはまだわかりませんが、まだまだ問題は山積みで解決には時間がかかると思います。
実際看護師としてフルタイムで働いて、やっぱり仕事は大変でその割に報酬が少ないと感じます。
夜勤しなくても同じくらいの給料がもらいたいですし、もう少し人員や時間に余裕をもって働きたいと思います。
でも非正規雇用、アルバイトや派遣といった働き方なら自分に合った働き方を選びやすいと思います。
看護師という仕事の需要はむしろ増えていくので、アルバイトなどの非正規雇用の仕事を転々とする働き方もありだと思います。
看護師以外の仕事とダブルワークをしたり、看護師の仕事を掛け持ちしたりすることもできます。
自分の好きな時間に働いたり、お金を貯めて今月はもう仕事しないぞ!みたいな自由な働き方が可能です。
退職金がもらえなかったり、年金が安くなったり、ボーナスがないなどのデメリットはもちろんあります。
しかし一つの職場でしんどい仕事を我慢して、将来にも不安を抱えているくらいならこのような選択肢もあると思います。
若い人ならもちろんですし、私のように中年既婚者でも家族の理解が得ることができればやってみればよいと思います。
個人的には、一つの職場しか経験がなく転職なんて考えたこともない人より、非正規で働いたり看護師以外の副業もできる人の方が将来性があると思うのですがどうでしょう?
看護師は資格があれば(心理的ハードルは高いにせよ)何歳からでも再就職は容易なので気軽に始めてみれば良いと思います。
日本人は、正規雇用でフルタイムで働かなければいけないという固定概念が強いように思います。
しかし看護師に限っては、もう少し自由に考えても良いのではないでしょうか。
まとめ
●看護師は将来不足する
●看護師不足によって労働環境が悪化する可能性がある
●国や日本看護協会は看護師が不足しないように色々頑張っている(はず)
●心理的ハードルは高いが再就職は容易
●看護師は非正規雇用という働き方も十分あり
これらは日本の医療の大きな流れとして個人で変えようがないことです。
それでは私たち現場で働く看護師はこれからどうすれば良いのでしょうか。
今の職場のことだけを考えるのではなく、これからの日本の医療が抱える問題や、看護師以外の仕事や経済についてアンテナを張ることは大事だと思います。
家計管理をして将来の貯蓄をする、老後の資金は年金だけに頼らず、つみたてNISAやiDeCoのような制度を利用するなどマネーリテラシーを高めることも必要でしょう。
看護師は再就職自体は容易にできるので(心理的ハードルは高いにせよ)そこを覚悟できれば違う職場を経験することも良いと思いますし、正規雇用ではなく非正規雇用でダブルワークをするという選択肢もあると思います。
在宅ワークの副業をはじめてみることも良いと思います。
このような働き方に私はとても夢を感じます。
日本の医療の将来については閉塞感がありますが、個人としては看護師という仕事はフットワークが軽く色々な選択肢を持つことができる職業だと思います。
看護師を選んだ人たちが将来に希望の持てるようになればいいですね。
参考文献
この記事を書くにあたって参考にした書籍を紹介します。
看護師という職業の経済性や将来性についての書籍があまりなかったのでとても勉強になりました。
今回はこの2冊を参考に記事を書きました。
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